『本間龍が見る名護市長選挙 沖縄メディアはどう報じているか(1)』

  座間宮編集長からお招き頂き、今回の名護市長選を地元メディアはどう報じているか、また、広告はどう関わっているのかを3回シリーズでお届けします! 
 まず初回は新聞メディアから見ていきます。というよりも、 辺野古への米軍基地移設というあまりにも重いテーマを 背負わされたため本土でも頻繁に報道されてはいますが、今回は名護市という沖縄県内のいち市町村の選挙なので、知事選や県議選などと違って名護市以外、た とえば那覇市内には選挙の緊迫感は伝わってきていません。

  従ってテレビやラジオのように全県にあまねく届くようなスポット広告を打つ意味がなく、ローカルのニュース番組ではもちろん報道されていますが、CMは両陣営共に流していないようです(まだ昨日一日しか見ていないので、本日局に確かめます)。

  と言うわけで、自然と今回は新聞報道を分析する比重が高くなります。その新聞ですが、沖縄は非常に面白い特徴があるので、今日はまずそこからお話ししましょう。

   どこの県にも地元紙と呼ばれる新聞がありますが、ここ沖縄は非常に特殊で、「琉球新報」と「沖縄タイムス」の二紙でほぼシェアを独占し、朝日・讀賣などの いわゆる全国紙は殆ど売られていません。これは沖縄県内に印刷工場がないため空輸しなければならず、他紙がつけいる隙がない、という特殊事情に拠ります。

   2013年の調査では、琉球新報が163,475部でシェア(世帯普及率)27.65%、沖縄タイムズが161,210部で.27,27%となっています から、まさに僅差で拮抗しているのです。5年前は琉球新報が30%を超えていましたから、ここ数年でタイムズが追い上げてきたようです。

   一つの県内に新聞が二紙あるのは珍しくありませんが、その場合はどちらかが保守色が強くて、もう一紙はその逆、という場合が多いのです。つまり報道姿勢 に、目に見える違いがあります。ところがこの沖縄を二分している二つの新聞は、両方共に非常に革新色・左派色の強い、分かり易く言ってしまえば反自民党的 な論調の強い新聞なのです。これは本土ではもう殆ど見られなくなった傾向なので、非常に面白いと思いました。

  ですから、昨年末に沖縄県の仲井真知事が米軍基地の辺野古移設を容認する発言をした際には、二紙共に知事を完全な裏切り者扱いし、非常に厳しい見出しや記事で知事を批判しています。

   特に琉球新報の見出しなどはスポーツ新聞と見まがうほど大きく言葉も辛辣で、行儀のいい全国紙を見慣れた目には大変新鮮に映りました。沖縄タイムスも強烈 さでは引けをとりません が、朝日新聞と提携しているためか、やや紙面が大人しいというか、節度を保っている印象です。

  両紙ともに2009年に夕刊を廃止したため朝刊の記事量が多く、沖縄県以外の経済・国際ニュースは共同通信の配信を受けているため、似通った記事構成になっています。

 では、そのような二紙が名護市長選挙をどう伝えているのか?を引き続き、お知らせいたします!

■本間龍 プロフィール

著 述家。1962年、東京都に生まれる。1989年、博報堂に中途入社し、その後約18年間、一貫して営業を担当する。北陸支社勤務時代は、北陸地域トップ 企業の売り上げを6倍にした実績をもつ。2006年同社退職後、在職中に発生した損金補填にまつわる詐欺容疑で逮捕・起訴され、栃木県の黒羽刑務所に1年 間服役。出所後、その体験をつづった『「懲役」を知っていますか?』(学習研究社)で作家デビューをする。服役を通じて日本の刑務所のシステムや司法行政 に疑問をもち、調査・研究を始める。また、福島第一原発事故後、メディアの姿勢に疑問を持ち、大手広告代理店とメディアの癒着を解説した『電通と原発報 道』(亜紀書房)を上梓。メディアと原発、司法行政と刑務所システムをテーマにした講演や著述、テレビ出演など、幅広く活動している。著書にはほかに 『名もなき受刑者たちへ』(宝島社)、『転落の記』(飛鳥新社)、『大手広告代理店のすごい舞台裏』(アスペクト)、『だれがタブーをつくるのか』(共 著)、『原発広告』(以上、亜紀書房)がある。
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